テーマ・セクター分析

AIデータセンター関連銘柄7選|生成AI普及で急成長するインフラ株を要因分析・指標比較

AIデータセンター関連銘柄7選|生成AI普及で急成長するインフラ株を要因分析・指標比較

生成AIの爆発的な普及を背景に、AIデータセンター関連の日本株が幅広い投資家の注目を集めています。ChatGPTを皮切りに、生成AIは企業のビジネス現場から個人の日常利用まで急速に広がり、そのインフラとなるデータセンターへの需要は世界規模で膨張を続けています。GPU・クラウドを提供する事業者から冷却設備、電力供給まで、バリューチェーンが多層にわたるため、物色の波が次々と異なるセクターに広がるのがこのテーマの最大の特徴です。

本記事では、なぜ今この分野に資金が集まっているのかを3つの要因に分解したうえで、日本を代表する7銘柄をバリューチェーン別に整理し、予想PER・PBR・時価総額の比較表とともに詳しく解説します。各銘柄がテーマの中でどのポジションにあり、どんな強みを持つのかを把握することで、物色の広がりを先読みするヒントが得られます。


なぜ今、AIデータセンター関連が注目されているのか

要因①:生成AI普及によるGPU・クラウド需要の急拡大

ChatGPTをはじめとする生成AIの企業・個人への浸透が加速し、AIの学習・推論に使うGPUサーバーの需要が世界規模で急増しています。NVIDIAのH100・H200・B200といった高性能GPUは慢性的な品不足が続いており、クラウド事業者は設備投資を積み増すほかありません。日本国内でも政府のAI戦略と連動する形で、GPUクラウドサービスの整備が加速しています。国内データセンター市場は2027年に約4兆円規模へ拡大するとの民間予測もあり、2022年比で約2倍の成長が見込まれています。

  • さくらインターネットが政府調達案件でGPUクラウドを受注、国産AIインフラの象徴的存在に
  • GMOインターネットグループも高性能GPUレンタルサービスを展開し収益化が急速に進む
  • NTT・KDDIが国内外でデータセンターへの大型投資を発表、インフラ整備が本格化
  • 生成AIの利用量増大に伴い、GPUクラウドへの企業需要が年率30〜50%以上のペースで拡大
  • データセンターの新設・増設ラッシュが継続し、用地・電力・設備の確保競争が激化

要因②:データセンターの電力・冷却需要が周辺産業に波及している

AIサーバーは従来のITサーバーと比較して消費電力が数倍から十数倍に達します。NVIDIAのH100 GPUは1枚で約700Wを消費し、1ラックに搭載すれば数十kWという膨大な熱量を発します。データセンターの電力コストと冷却効率の改善が業界全体の最重要課題となっており、設備エンジニアリング企業や電力会社に新たな巨大需要が生まれています。空冷では対応が難しいため液浸冷却や直接液冷(DLC)などの高度な冷却技術への需要が急増し、専門設備工事の案件が急増しています。

  • 液浸冷却・空冷強化など高効率冷却システムへの需要が急増し、設備工事案件が増加
  • 大規模データセンターの立地選定では電力安定供給が最重要条件となっている
  • 国内データセンター市場は2027年に約4兆円規模へ拡大する見通し(2022年比約2倍)
  • 冷却関連の設備工事単価が上昇傾向にあり、設備エンジニアリング企業の利益率が改善

要因③:政府のデジタルインフラ投資・経済安全保障政策が国内DC整備を後押し

政府は経済安全保障の観点から、重要なデータを国内で処理する「データ主権」の確保を最重要課題として位置づけています。機密性の高い行政データ・個人情報・産業技術情報を海外のクラウドに預けるリスクを回避するため、国産クラウド・国内データセンターへの政策的支援が相次いでいます。国産AIインフラの整備は経済安全保障法の重要物資指定とも連動しており、補助金・融資・規制緩和のパッケージが企業の投資判断を後押ししています。

  • さくらインターネットが政府の「特定重要物資」に係る支援を受けGPUクラウドを整備
  • Rapidus・TSMC熊本などの半導体工場向けデータ処理需要も国内DC需要を底上げ
  • NTTが「IOWN(革新的光電融合ネットワーク)」構想のもとDC分散配置を推進
  • 地方自治体との連携による地方DC整備が進み、電力・用地コストの低い地域への分散投資が加速

対象銘柄の位置づけ(バリューチェーン整理)

AIデータセンターのバリューチェーンは大きく4つのレイヤーで構成されます。それぞれの位置づけを把握することで、どの局面でどの銘柄に注目が集まりやすいかが見えてきます。テーマ相場では「最も直接的な恩恵を受ける上流層」から物色が始まり、やがて「設備・電力など周辺層」へと広がるのが典型的なパターンです。

(A)GPU・クラウドサービス提供
AIワークロードを直接処理する上流層。需要増の恩恵を最も直接的に受けるポジション。

さくらインターネット(3778):4月にマイクロソフトの国内データセンターへの採用のニュースが出てくる。1996年創業のインターネットインフラ企業で、レンタルサーバー・クラウド・データセンターを展開。2024年に政府の「特定重要物資(クラウドプログラム)」供給確保計画の認定を受け、国産GPUクラウド基盤の整備事業者として選定された。政府から最大501億円の補助金支援を受け、大規模GPU計算基盤の整備を進めている。石狩・東京・大阪に自社データセンターを保有し、電力コストの低い北海道でのGPU増強に強みがある。政府案件の受注継続と民間企業向けのGPUクラウド需要拡大の両方が業績拡大のドライバーとなっており、国産AIインフラの象徴的存在として投資家の注目度が極めて高い。

GMOインターネットグループ(9449):ドメイン・ホスティングから暗号資産・決済まで多角的なインターネットサービスを展開するグループ。傘下のGMOクラウドがNVIDIA製H100/A100 GPUを搭載した高性能クラウドサービス「ConoHa」を展開し、AI開発者・研究機関向けにGPUレンタルサービスを提供している。グループ全体の売上規模は2,000億円超で、GMOクラウドのAI関連クラウド事業はグループの成長ドライバーとして注目される。暗号資産マイニング事業での大規模演算設備運営のノウハウを活かし、GPUクラウドの効率的な運営に強みを持つ。

(B)通信インフラ・大規模DC事業者
国内最大規模のデータセンターを保有・運営し、AI時代の基盤インフラを担う。

NTT(9432):国内最大の通信事業者で、時価総額約13兆円の超大型株。グループ全体でデータセンター床面積は国内外合計で数十万㎡規模に達し、AI時代のインフラとして存在感を増している。「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」構想のもと、光電融合技術による低消費電力・高速通信ネットワークの実現を目指しており、AIデータセンターの電力課題を根本から解決する技術として国際的にも注目を集めている。2030年度までにデータセンター事業の収益を現在比2倍以上に拡大する計画を掲げる。低PER・低PBRながら安定配当と成長投資のバランスが評価される銘柄。

KDDI(9433):au通信を中核に、データセンター・クラウド・IoT・金融サービスを手がける総合通信グループ。国内外に大規模データセンターを保有し、エンタープライズ向けのクラウド・コネクティビティサービスでNTTと並ぶ存在感を持つ。2024年にローソンへの出資を通じた「小売×通信×データ」のエコシステム構築を加速。国内DC市場の拡大を見越し、千葉・大阪・海外(米国・欧州・ASEAN)でのDC新設投資を継続している。株主還元も積極的で、自社株買いと増配を組み合わせた総還元性向の高さが機関投資家に評価されている。

(C)冷却・空調設備エンジニアリング
電力消費量の大きいAIサーバーを適切に冷却するための設備工事を担う。

高砂熱学工業(1969):空調・給排水設備工事の大手で、売上高は年間3,000億円超。スーパーコンピュータ「富岳」(理化学研究所)の冷却設備を手がけた国内トップクラスの実績を持つ。AI時代に求められる高発熱サーバー向けの精密空調・液冷システムの設計・施工に強みがあり、データセンター向け設備工事の受注が急拡大している。設備工事業界の中でも技術力・施工管理力が高く評価され、大型DCプロジェクトでの優先指名入札が増えている。受注残の増加が業績の先行指標となるため、決算時の受注高・受注残の確認が重要。

三機工業(1961):空調・衛生・電気の総合設備エンジニアリング会社で、年間売上高は約2,000億円。データセンター・病院・研究施設など高度な環境制御が求められる建物の空調システム設計・施工に豊富な実績を持つ。AIデータセンターの新設ラッシュで、精密空調システムの設計・施工案件が急増している。高砂熱学工業と並ぶ設備工事業者として、DC案件での受注競争に参加しており、受注単価の上昇が利益率改善につながっている。時価総額は中型規模であるため、大型案件の受注発表が株価に直接的な影響をもたらすケースも多い。

(D)電力供給
データセンターの大消費電力を賄う電力会社。原発再稼働による安定供給と電力単価の競争力が注目される。

関西電力(9503):国内で最も多くの原子力発電所を保有・稼働させている電力会社。AIデータセンターに要求される24時間365日の安定電力供給と低炭素化要求を、原子力発電で同時に満たせる数少ない事業者として注目される。大飯・高浜・美浜の各原発が順次再稼働・運転延長を進めており、発電コストの低下が収益改善に直結している。DC事業者にとって「再エネ+安定電源」の確保は立地選定の最重要条件であり、電力供給力の高さが関西地区へのDC集積を促す要因になっている。


指標比較:予想PER・PBR・時価総額(7銘柄)[2026年4月時点]

GPU・クラウド事業者は成長期待が高くバリュエーションが高めになりやすい一方、通信・電力・設備系は相対的に低PER・低PBRで推移する傾向があります。テーマ内でのバリュエーション差を把握することが、物色の広がりを読む上での参考になります。さくらインターネットのように政府案件を獲得した成長期企業は、利益水準に対して先行きの期待が大きく株価に織り込まれやすいため、PERが高水準となりやすいのが特徴です。

コード 銘柄名 バリューチェーン 予想PER PBR 時価総額(概算)
3778 さくらインターネット GPU・クラウド提供 約913倍 約4倍 約1,200億円
9449 GMOインターネットグループ GPU・クラウド提供 - 約2.7倍 約3,200億円
9432 NTT 通信インフラ・DC事業者 約13倍 約1.3倍 約14兆円
9433 KDDI 通信インフラ・DC事業者 約15倍 約2.1倍 約11兆円
1969 高砂熱学工業 冷却・空調設備 約16倍 約2.9倍 約6,200億円
1961 三機工業 冷却・空調設備 約17倍 約3.4倍 約3,800億円
9503 関西電力 電力供給 約8倍 約0.8倍 約3兆円

※指標は参考値です。最新の数値は各証券会社の情報サービスでご確認ください。

見方のポイント(分析メモ)

  • さくらインターネットはPERが高水準で推移しており、成長期待が先行して織り込まれやすい。政府補助金の採択・GPUクラウドの稼働進捗が株価材料の中心。補助金の執行スケジュールや商用サービスの売上計上タイミングが遅れると失望売りが出やすいため、決算ごとの進捗確認が重要
  • NTT・KDDIは低PER・低PBRで安定感がある。AI・DC関連の成長要素を取り込みながら、通信インフラ会社としての安定収益も持ち合わせており、テーマ内での「守り」の銘柄として比較されやすい。配当利回りが相対的に高く、インカム投資家にも訴求力がある
  • 高砂熱学工業・三機工業は受注増が業績に直結しやすいビジネスモデル。受注残の積み上がりは数年先の業績を先取りする指標であり、四半期ごとの受注発表が最大の注目ポイント。時価総額が中型圏にあるため、大型案件の受注発表が株価に大きなインパクトをもたらしやすい
  • 関西電力はDC向け電力供給だけでなく、DC立地地域としての関西エリアの魅力を高める立場でもある。原発再稼働の進捗次第で電力コスト競争力が変化するため、再稼働スケジュールの確認が重要
  • テーマ全体の物色サイクルを読む:クラウド→冷却→電力の順に物色が広がるパターンが多い。さくらインターネットが先行し過熱感が出た後、設備・電力系へ物色が移動するパターンを意識したい

まとめ:AIデータセンターは「クラウド→冷却→電力」と物色の輪が広がるテーマ

AIデータセンター関連の日本株は、GPU・クラウド事業者への直接的な恩恵から始まり、冷却・設備工事、さらに電力インフラへと物色の輪が広がっていくのが特徴のテーマです。生成AIの普及という構造的な変化を背景にしており、単発のブームではなく中長期にわたって需要が積み上がる性質を持っています。

テーマの広さゆえに、どのレイヤーへの関心が高まっているかを常に確認しながら各社の受注動向・設備投資計画・政策の進捗を追うことが、物色の方向性を読む基本になります。バリューチェーンを縦断する視点で各銘柄のポジションを把握し、局面ごとの強弱を見極めることが重要です。また、国内DC市場の成長見通しや政府のデジタルインフラ投資の動向も、テーマ全体を俯瞰する上での参考材料として継続的に注視していくことをお勧めします。

※本記事は情報整理を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。

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この記事を書いた人

youdate/RabbitData 運営

  • 元証券会社勤務
  • 個人投資家歴10年以上
  • 日本株・テーマ株投資を中心に運用

X(旧Twitter):@kabuhedge

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