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【高市関連】SMR・原子力関連銘柄|AI電力需要増で再評価される次世代エネルギー株を要因分析・指標比較

 【高市関連】SMR・原子力関連銘柄|AI電力需要増で再評価される次世代エネルギー株を要因分析・指標比較

AIデータセンターの電力消費量の急増を背景に、原子力発電が「クリーン×安定電源」として世界的に再評価されています。日本でも第7次エネルギー基本計画で原発の最大限活用が明記され、SMR(小型モジュール炉)の商用化競争も加速しています。原発再稼働の恩恵を受ける電力会社から、SMR部品を手がける製造業まで、多層的な物色が続いています。

本記事では、このテーマが注目される3つの要因を整理し、関連7銘柄をバリューチェーン別に詳しく位置づけた上で指標比較を行います。各銘柄の強み・競争優位性・投資家として注目すべきポイントも丁寧に解説します。


なぜ今、SMR・原子力関連が注目されているのか

要因①:AI電力需要の急増が電力不足への懸念を高め、原子力の役割が再認識されている

生成AIの普及によりデータセンターの電力消費量が急増しており、グーグル・マイクロソフト・アマゾンなど大手テック企業が原子力発電との長期電力購入契約(PPA)を相次いで締結しています。AIサーバーの消費電力は従来型の数倍に達し、データセンター全体では電力需要が急増しています。再生可能エネルギーは出力変動があるため安定電源としての弱点があり、24時間365日安定して稼働できる原子力への期待が高まっています。日本でも「電力の安定確保」が企業立地・DC整備の課題として浮上し、原発の重要性が見直されています。

  • AIサーバーの消費電力は従来型の数倍に達し、データセンター全体では電力需要が急増
  • 再生可能エネルギーは出力変動があるため、安定電源として原子力への期待が高まっている
  • 米国では廃炉になった原発の再稼働(Three Mile Island等)が相次いでいる
  • 国内でも「電力安定×脱炭素」を同時実現できる電源として原子力の位置づけが高まっている

要因②:第7次エネルギー基本計画で原発「最大限活用」が明確化された

政府は2025年に策定した第7次エネルギー基本計画において、既存原発の再稼働推進・運転期間延長・次世代原発の開発を明確に位置づけました。60年超運転を可能にする制度改正で既存原発の経済寿命が延長され、電力会社の設備投資回収期間が延長されることにより収益性の見通しが改善しています。政策的な後押しが事業会社の投資計画・業績見通しを変化させており、長期にわたって継続する構造的なテーマとなっています。

  • 60年超運転を可能にする制度改正で既存原発の経済寿命が延長
  • 関西電力・九州電力・東北電力などで再稼働・稼働延長の動きが続く
  • 革新軽水炉・高温ガス炉・SMRなど次世代炉の開発を政府が支援
  • 原子力の2035年電源構成比率20%以上という政策目標が関連銘柄の長期的な収益基盤を支える

要因③:SMR(小型モジュール炉)の商用化競争が加速し日本企業に恩恵

SMRは従来の大型原発より工期が短く・建設コストが低い・モジュール化による量産効果が期待できる次世代の小型原子炉です。国際エネルギー機関(IEA)は2040年までにSMRが世界の原子力容量の10%を占める可能性を示しており、日本の重工業・部品メーカーへの発注が現実化しつつあります。原子炉の「圧力容器」という最重要部品で世界唯一の大型鍛造技術を持つ日本製鋼所の受注実績は、日本がSMR供給チェーンで存在感を持つことを示す象徴的な事例です。

  • 日立製作所グループがカナダ・英国でのSMR建設プロジェクトに参画
  • 日本製鋼所が北米向けSMR部品(内部構造物)の初受注を2024年に発表
  • 三菱重工業がSMR・高温ガス炉・マイクロ炉の開発を推進中
  • SMR市場は2030年代に数兆円規模への成長が見込まれ、長期的な受注機会が拡大

対象銘柄の位置づけ(バリューチェーン整理)

原子力関連のバリューチェーンは、原子炉を設計・製造する重工業から、実際に電力を販売する電力会社、原子炉の構成部品を手がける専業メーカーまで幅広く構成されます。テーマ内でのポジション・リスク・バリュエーションが大きく異なるため、各銘柄の特性を理解した上で投資判断することが重要です。

(A)SMR設計・開発(総合重工業)

三菱重工業(7011):日本最大の重工業企業で、防衛・航空・エネルギーを3本柱とする。原子力エンジニアリング部門では加圧水型原子炉(PWR)の設計・製造で国内最多の実績を持ち、関西電力・九州電力・四国電力・北海道電力向けに納入実績がある。SMR分野では「三菱先進原子炉(MASC)」の開発を進め、マイクロ炉・高温ガス炉の研究も同時並行で推進している。原子力以外にも防衛・宇宙ロケット・脱炭素エネルギーなど複数の成長テーマを内包しており、PERは防衛テーマの高まりとともに大幅に切り上がっている。

日立製作所(6501):ITサービス・電力インフラ・産業機器の総合エレクトロニクス企業で、時価総額は約17兆円の超大型株。カナダ・英国でのSMRプロジェクトにはGE日立ニュクリアエナジー(子会社)を通じて参画しており、海外市場でのSMR展開が長期的な評価材料となっている。主力のITサービス事業(Lumada)が高収益基盤として機能しており、SMRはあくまで「将来の成長オプション」として評価される。鉄道・水処理・ビル管理など幅広いインフラ事業も持つ総合インフラ企業としての側面が強い。

(B)原発再稼働受益(電力会社)

関西電力(9503):国内で最も多くの原子力発電所(大飯・高浜・美浜・舞鶴)を保有・稼働させており、原発再稼働恩恵の「純度」が電力会社の中で最も高い。原発の稼働率が高いほど燃料費が削減されて電力コストが低下し、業績が大幅に改善する構造にある。2024年度は原発複数基の稼働延長・再稼働が進んでおり、収益性が急回復している。AIデータセンターの誘致先としての関西エリアの魅力を高める「電力供給力」としても注目されている。配当利回りは電力会社の中でも高水準で、インカム投資家にも人気がある。

九州電力(9508):川内原発・玄海原発の早期再稼働で国内電力会社の中でも原発稼働の先行事例となった。再稼働が他社より早かったため、燃料費削減効果が先に業績に反映されており、財務の健全化が進んでいる。TSMCの熊本進出に伴う電力需要増加が長期的な収益底上げ材料となっており、九州経済の成長と電力需要の拡大が重なり合う好循環が期待できる。

東北電力(9506):女川原発(宮城県)の再稼働が進んでおり、SMRの国内導入検討でも先行している地域電力会社。東北エリアの再生可能エネルギー資源の豊富さと原子力の組み合わせが電源ポートフォリオの強みとなっている。時価総額は大手電力の中では中型規模で、原発再稼働の進展に伴うPBR水準訂正ポテンシャルが注目されている。

(C)原子炉部品・機器(専業メーカー)

日本製鋼所(5631):原子炉圧力容器・蒸気発生器などの大型鍛鋼品製造で世界唯一の大型鍛造技術を持つ。原子炉の心臓部である圧力容器は非常に高い品質・技術水準が要求されるため、日本製鋼所以外に製造できる企業は世界でほとんど存在しない。SMRの普及が進めば、圧力容器の需要が爆発的に拡大するという「唯一無二の参入障壁」が同社の最大の投資魅力。2024年の北米向けSMR部品初受注は、この需要が現実に動き始めたことを示す重要なシグナル。プラスチック機械・産業機械なども手がけるが、原子力部門が最大の成長ドライバーとして評価されている。

岡野バルブ製造(6492):原子力発電所の一次冷却系バルブ(原子炉内の冷却水を制御する最重要部品)を国内で唯一製造できる超専業メーカー。一次冷却系バルブは放射線・高圧・高温という極めて過酷な環境で使用されるため、製造できる企業が国内ではほぼ同社のみという絶対的な参入障壁を持つ。時価総額は約200億円程度と非常に小さいが、原子炉バルブ専業企業として原子力テーマの盛り上がり局面では大きな株価反応を見せることがある。流動性は極めて低いため、小口の売買でも株価が大きく動く点に注意が必要。


指標比較:予想PER・PBR・時価総額(7銘柄)[2026年3月時点]

電力会社は安定した収益基盤を持つが成長性は限定的なため低PER・低PBRが多い。一方で重工業・部品メーカーはSMR期待を含む成長ストーリーでPERが上昇している傾向があります。テーマ内でのバリュエーションの違いを意識することが、局面ごとの銘柄選択の参考になります。

コード 銘柄名 バリューチェーン 予想PER PBR 時価総額(概算)
7011 三菱重工業 SMR設計・開発 約57倍 約5.6倍 約15兆円
6501 日立製作所 SMR設計・海外展開 約27倍 約3.2倍 約20兆円
9503 関西電力 原発再稼働(保有基数最多) 約8倍 約0.9倍 約2.9兆円
9508 九州電力 原発再稼働(川内・玄海) 約6倍 約0.8倍 約8,600億円
9506 東北電力 原発再稼働・SMR検討 約4.5倍 約0.6倍 約6,000億円
5631 日本製鋼所 原子炉圧力容器・SMR部品 約35倍 約3.2倍 約6,500億円
6492 岡野バルブ製造 原子炉バルブ専業 約26倍 約1.5倍 約200億円

※指標は参考値です。最新の数値は各証券会社の情報サービスでご確認ください。

見方のポイント(分析メモ)

  • 関西電力は国内で最も多くの原発を保有・稼働させており、原発再稼働恩恵の「純度」が高い。九州電力・東北電力と比較してPBRがやや高い水準にあり、安定した収益力の評価が反映されている。原子力の稼働率向上が利益改善に直結するため、各原発の稼働スケジュールが最重要の確認事項
  • 日本製鋼所は原子炉圧力容器で世界トップシェアを持ち、SMR普及の直接的な受益者候補。原発関連以外にも産業機械・プラスチック機械等を持つが、SMR商用化の進捗が最大の注目点となっている。北米向け受注の継続・拡大が業績の上振れ要因
  • 岡野バルブ製造は時価総額が約200億円と小さく、原子炉バルブ専業メーカーとしてSMR関連ニュースへの株価反応が大きくなりやすい。流動性には注意が必要。小型株特有の値動きを理解した上で取り組むことが重要
  • 電力3社(関西・九州・東北)は安定配当が期待できる」インカム型銘柄」の側面も持つ。原発再稼働による業績改善が配当増額につながる可能性があり、配当利回りの水準は定期的に確認しておきたい
  • SMRの商用化スケジュールはまだ不確実性が高く、「期待先行」の部分が大きい。日本製鋼所・三菱重工業・日立製作所へのSMR期待は中長期の成長ストーリーとして評価されているが、実際の大規模受注が実現するまでは確認が必要

まとめ:SMR・原子力はAI時代の「電力問題」が生んだ構造的テーマ

SMR・原子力関連の日本株は、AI電力需要増・政策転換・SMR商用化競争という3つの構造的変化を背景に注目を集めています。電力会社は原発再稼働が直接の収益インパクトとなる一方、重工業・部品メーカーはSMRという将来の成長ストーリーも加わった評価を受けています。

エネルギー基本計画の進捗・各原発の再稼働スケジュール・海外SMRプロジェクトの受注動向が、このテーマを追う上での重要な確認ポイントです。電力会社を「安定配当×業績改善」の銘柄として、重工業・部品メーカーを「SMR成長期待×技術優位性」の銘柄として、異なる視点で評価することがテーマを深く理解する上で有用です。

※本記事は情報整理を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。

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この記事を書いた人

youdate/RabbitData 運営

  • 元証券会社勤務
  • 個人投資家歴10年以上
  • 日本株・テーマ株投資を中心に運用

X(旧Twitter):@kabuhedge

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